底辺でも誇り高く生きる日記

貧乏・コミュ障・卑屈の三重苦主婦です

貧乏でも子供を塾に通わせたい〜その2〜

 

 

 

こちらの記事の続きになります。

 

tomatoma218.hatenablog.com

 

 

チラシに記載されていた住所通りの場所に着くと、5階建ての古いマンションが聳え立っていた。大手の塾が駅前にあるのに対して、この塾は住宅街のど真ん中。どうやらこの古いマンションのどこかの一室がその塾であるらしい。

 

マンションの前に自転車を停め、狭い階段を上った先の一室が、そこの塾だった。門構えは完全に普通の家。少し…いや、かなりの不安を感じながらも、思い切ってインターフォンを押す。しばらくすると、これまた私にとっては(変な意味ではなく)もう超どストライクなおじさんとお爺さんの中間ぐらいの年齢と思われる塾長が、満面の笑みで迎え入れてくれた。

 

 

「お待ちしていましたよ〜どうぞ、お入りください」

 

 

 子供と一緒に緊張しながら、塾長の後をついて行った。モノの溢れる狭い面談室に通されると、家に入っていたチラシの内容を少しだけ詳しくした手作り感満載のチラシを手渡され、塾長から色々と説明を受けた。実際に勉強する教室も少し見せて頂いたが、本当に小さかった。1クラス5人程度の少人数制であるらしい。

 

「うちではね、目標をクリア出来たら、その都度、ご褒美をあげているんですよ、ほら、今流行りのこれとかね」

 

そう言って塾長が見せてくれたのは、段ボールいっぱいに入った鬼滅の刃グッズ。どや!欲しいやろ!的な得意げな顔をする塾長だったが、残念ながら我が家の息子は流行り物に全く興味がなく、「すごいですね…」と口ではいうものの、完全に引き気味。

 

 

「私もねぇ、だいぶ覚えたんですよ。ほら、このキャラは、○○でしょ、これは…」

 

 

楽しそうに話す塾長に親子で戸惑いながらも、子供は満更でもない顔をしていた。もう何年も親をしているから分かる。この顔は相手に気を許している顔である。

 

そうこう話を聞いていると、これから授業だという生徒さんがやってきた。その子を見てびっくりする子供。なんと、学校の同じクラスの優等生だったからだ。

 

 

「この子は本当によく出来る子なんですよ。いつも一番に来てね、よく頑張っていますよ」

 

塾長に褒め殺しされて、優等生は照れて俯きながら、近くにあるタイマーをセットした。そして、モノの溢れかえった古い水道で手を洗い始めた。

 

「うちでは来たらすぐに自分でタイマーをセットして1分間手を洗ってもらいます。コロナ対策もしていますよ、ほら、アルコールも除菌グッズもまだまだたくさん在庫ありますからね!」

 

またしても満面の笑みを浮かべながら、塾長が山積みされた段ボールの箱を指差す。1つ1つマジックで「アルコール」「手洗い液」と書かれている。

 

手洗い終了のタイマーが鳴り、クラスの優等生は子供を一瞥し、教室へ入っていった。そのタイミングで、私達の面談も終了し、体験授業の予約をし、失礼した。

 

 

 「体験は来週だけど、雰囲気はどうだった?」

 

帰り道、子供に聞いてみると、「あの先生、優しそう。いいかも…」と、やはり満更でもなさそうな台詞が返ってきた。さすが、私の息子。よく分かっている。私もあのおじさん(お爺さん)先生は絶対にガチだと思う。

 

 

一昔の匂いが漂う、古い、小さな町の塾。ところ狭しに段ボールが積んである、塾らしくない塾。セレブなママ友は絶対に子供をこの塾には通わせないだろう、と確信したほど、大手とは何もかもが違い過ぎる塾。

 

だけど逆に、私にとってはここしかない!としか思えなかった。子供を託すにはまさにどストライクの塾だったからだ。

 

 

さっきからどストライクだとかガチだと言っているのは、実は私もあの先生と同じようなお爺さんに教えてもらった、町の個人経営塾出身者だからだ。月謝も地元で一番安く、教室も小さいし古かった。だけど、人の良いお爺さん先生に優しく丁寧に教えてもらった、忘れられない思い出がある。底辺ながらも最低限の学を身に付けて、こうして今生きていけているのは、あの先生のおかげでもあるからだ。

 

このコロナ禍の中、オンライン授業もなく、アナログで、時代の逆を行くような塾だけど、生徒に自発的にタイマーを掛けさせ、1分間手を洗わせてから授業をするという取り組みに、深く感銘を受けた。コロナ対策を相手任せにせず、自分の身は自分で守る。そうする事で、相手も守る。当たり前だけど一番大切なことではないかと思ったのだ。

 

とはいえ、まだ肝心の授業は受けていないから本決まりとは行かないのだが(ここまでほとんど私のエゴだし)、子供も先生に好印象を持っているし、優等生の子も居て子供の刺激にもなりそうだし、このまま入塾の流れになればいいと思っている。