貧乏PRIDE
以前、我が家の子供の服は、ほとんどがセレブなママ友のお子さんからのお下がりなので、上の子供に新しい服が欲しいと言われた話を書いた。
この時に買ったダッフルコートは、もうすでに袖に毛玉が出来まくっている。誰も着た事のない新品ということが余程嬉しかったのか、子供がたくさん着た結果である。そして、先週のスイミングスクールにも子供がこのダッフルコートを着て行ったのだが、いつも服をくれるセレブなママ友がそれを見て、衝撃の一言を発したのだ。
「あ。このダッフル、うちも兄弟お揃いで買ったよ〜。でも、2人ともすぐ飽きて着なくなっちゃってさ。まだ綺麗だから2人分あげようか?」
それを聞いた上の子供は固まった。その隣で私は更に固まった。唯一、無邪気に喜んでいるのは、兄と同じコートをもらえる事になった下の子供だけ。
仕方ない。何も知らない彼女は、全く悪くない。我が家がこのダッフルを買うのに、清水の舞台から飛び降りたことも、それだけの苦労をしただけに子供が大喜びしたことなんて、知る由もないのだから。
むしろ、この袖ボロのコートより綺麗なものを譲ってくれるなんて、親の私は正直有り難く思っているぐらいだ。しかし、上の子供の手前、大喜びする訳にもいかず、
「あ、ありがとう…でもね、なんか、このダッフル、めっちゃボロだけど、このボロ加減が逆に愛着湧いてるみたいでさ…だから、下の子供の分だけ頂いてもいいかな…」
と、みるみる落ち込んで行く上の子供の顔色を伺いながら、セレブママに返すので一杯一杯だった。
何の疑いもせず、セレブママは「そう?それなら次のレッスンの時に、次男ちゃんのだけ持ってくるねー」と、深く聞いてくることもなく、嫌な顔もせずこちらのお願いを快く受け入れてくれた事が幸いだったが、上の子供のテンションはだだ下がり。だけど、下の子供とお揃いになることは嬉しかったようで、アイスを食べたらあっという間に機嫌が直ってくれたので良かった。
貧乏でもプライドを捨てずに貫いた事は、自分で自分を褒めてもいいのではないか。着過ぎてすぐにボロになったコートでも、汗水垂らして働いた、すずめの涙ほどの給料から買った大切なものだから。
それでも、一瞬でも子供を傷つけてしまったことはやはり親として申し訳なく思う。私みたいな無能な人間は、今まで通りに汗水垂らして働く事しか出来ないが、それと並行して、少しでも子供を豊かに育てて行ける道を模索しなければ。